最初に断っておきたいし謝罪しておきたい。わたしはX JAPANをよく知らないし、この映画を見たいなー、と思ったのも単純な、そして悪趣味な興味だけだ。ごめんなさい。そんな気持ちで見るものではなかった。
もともとバンギャだったこともあり、今まであったX JAPANのあれやこれやはなんとなくわかる。メンバーも曲もわかっている、X JAPANは通ってないが、HIDEは好きだった。でも解散、再結成のあたりはイマイチわかってないし、解散した後のYOSHIKIのイメージは『外国に住んでいて何かのタイミングでバラエティなどに出てくる過去のスーパースター』だったし、X JAPANはわたしの中で『ボーカリストが洗脳されていた、伝説のバンド』であったのだ。
YOSHIKI、メンバー、関係者のインタビュー、過去の映像、(もしかしたらファンの方は知っていることが多かったかもしれないが)そして2014年におこなわれたマジソンスクエアガーデンのライブリハの裏側をメインにできている映画だったのだが、開始から10分で、YOSHIKIは人間なのだ、と頭をぶん殴られた気持ちになった。半裸でドラムを叩いている彼の腕や胸の肉は揺れ、背骨がくっきりと浮かぶ、そしてステージを降り、控え室に入ってすぐにすることは歯磨き。
ひとかけらの肉もついていないと思っていた。鍛えているとはいっても。終わった後にドラムを破壊し、舞台から降りたらすぐにシャンパンなんか開けるような人だと思っていた。控室で、ほぼ一人で、歯ブラシをくわえるYOSHIKIは、確実に人間であった。
それはほかのメンバーでも同じことで、不安に襲われ、おかしくなるTOSHIのその当時の話や、たぶんYOSHIKI直筆であろう、紅のスコアの字が男の子の字であったところ、厨二病的な単語が書き綴られた古いノート、メイク前のHIDEの年齢よりも幼い顔、disられてることを確認せずにインタビュー記事を拡散するYOSHIKIなど、『過去のスーパースター』は血が通う人となってこの映画の中にいた。
YOSHIKIは、ライブ1時間前に鎮痛剤を打ち、ただただ、ボロボロになりながらも音楽をやっている人で、そしてメンバーもただの人なのだ。
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YOSHIKIのTOSHIとHIDEへの愛はおかしいくらいだった。
TOSHIに関しては、はっきりとYOSHIKIが「ボーカリストが洗脳された」という。洗脳した集団の近づき方、解散ライブの時のTOSHIの恐怖(メンバーも会場にいる数万人のファンも、そしてその洗脳集団も全部彼の中では敵なのだ)、を当時の映像も交えて見せられると今まで軽々しく言っていた「TOSHI、しくじり先生とか出ればいいのにね」という言葉も出ない。解散ライブのときにYOSHIKIはHIDEと話し合い「万一の際にはマイクを切れ」とスタッフに指示していたことや、その洗脳集団からTOSHIへ「暴力もあった」という言葉が本当に怖すぎた。解散後も「汚い指令」を受けてまだ頭がおかしいままYOSHIKIに接触し、監視がない(だが10分おきに集団へ電話で報告しなければいけない)場所で、昔の話をして久しぶりに笑った、というのも辛すぎた。
HIDEに関しては、YOSHIKIがインタビューで言葉を詰まらせ、サングラスの下から涙が伝うところで、こちらとしてももうたまらない気持ちになった。めちゃくちゃ仲がいいっていうのは知っていたから、もう、しんどい。
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人間であると同時にものすごい信仰の対象として彼ら、YOSHIKIはいる。
観終わった後すぐに蟹めんまさんのこのツイートを見てあぁ、と思った。
『We Are X』最近のものから昔のものまでライブの客席がよく映るんですけど、どこ映しても平常心な人が全然いなくて、なんだかそこにすごく感動してしまいました。何万人規模の少年少女が頭振り乱して汗と涙にまみれながら満身創痍で柵にすがりついてステージ見てるジャンルってとてつもない https://t.co/r8ooHKVPVY
— 蟹めんま (@kanimen) 2017年3月5日
横浜アリーナに来ている、空港に詰めかける、解散ライブで頭を振り、泣き崩れる、HIDEの報道で失神するファンたち。X JAPANはその心の拠り所なのだ。
観ている時に頭に浮かんでいたのは先ほど書いた信仰の二文字だけだった。
「お母さんが亡くなってしまった時に支えてくれたのがX JAPANの楽曲だった」
「全部(好き)」
サインをもらって握手をして呆然と泣いてしまう女性もいるし、未だにHIDEちゃんのコスプレをしてライブに来る人もいる。
それは日本であろうとアメリカであろうと同じ。
すごい。本当に全員が熱に浮かされているし、それは悪いことでは全然ない。その熱をステージ上で浴びるメンバーは、YOSHIKIは苦しくないだろうか、と一瞬考えたが、その考えは捨てた。
YOSHIKIはファンの事を愛しているし、TOSHI、HIDEを含む今までのメンバーの事、関わってきたすべての人を愛している。全て、は大げさかもしれないけれど。
映画からの帰り道にX JAPANのファンのことを「運命共同体」と呼ぶことを思い出し、鼻の奥がツンとなった。
ヴィジュアル系のカルチャーに触れた方だけではもったいないと思う。是非、興味のある方は見に行ってほしい。
そういえば、HIDEちゃんのことに関しては、大島暁美さんのサイトがものすごく好きで時々読み返している。ご存知ない方は是非。
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